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2025.05.20

春の登大路茶会記 <スタッフ体験レポート>

登大路だより
春の登大路茶会記

館内を自在に見立てる「登大路茶会」

令和七年春、登大路ホテル奈良で初めての茶会を開催しました。レストランで茶の趣向に沿った特別コースを味わったあと、バーでの香煎、3階のスイートルームでお茶を楽しむプランです。茶の湯では、異なるものを別の美意識でとらえる「見立て」を楽しみます。今回はホテル内を自在に茶事の場に見立てるという大胆な試みです。
本記事では、スタッフによる体験会の様子をレポートいたします。

東大寺「お水取り」に寄せて

第1回 登大路茶会のテーマは「お水取り」。茶会を開催した3月に、東大寺二月堂修二会(しゅにえ)、別名「お水取り」が行われることにちなみました。亭主をつとめる藤丸正明(ふじまるただあき)さんは、太宰府天満宮参道の和菓子店に生まれ、大学入学と同時に奈良に定住、珠光茶会の企画立案に関わるなど、茶の湯を通して奈良の魅力を発信されています。

登大路茶会

まずは待合にあたるラウンジに集い、藤丸さんから今回の茶会の趣向を伺って、レストランへ向かいます。

レストラン ル・ボワ

ーレストラン ル・ボワへ
 

テーマに合わせた旬の食材  ル・ボワでの特別ランチ

ふきのとうのフリットと季節野菜とジャガイモのニョッキ

ランチは、旬の食材をとり交ぜた特別メニューです。カプチーノ仕立てのごぼうスープに始まったこの日のコース、ふきのとうのフリットや季節野菜とジャガイモのニョッキに続いて運ばれてきたのは、福井で水揚げされたきめ細かな白身の「若狭ぐじ(アカアマダイ)」。3月13日未明、若狭から送られた「香水(こうずい)」を二月堂下の井戸「若狭井(わかさい)」からくみ上げる「お水取り」の儀式にちなみました。

閼伽井屋(若狭井)と二月堂)

(参考写真)東大寺二月堂下の閼伽井屋。屋内の井戸「若狭井(わかさい)」より二月堂本尊にお供えする香水を汲む。

バーで香煎をいただく

しっかりお腹を充たしたあとは、同じフロアにある「ザ・バー」へ。2022年11月にオーベルジュとしてリニューアルした登大路ホテル奈良の中で、唯一創業当時と変わらぬ姿を残す重厚な空間です。カウンターの藤丸さんがグラスに注いでくれたのは、山椒と日本固有の柑橘類といわれる大和橘(やまとたちばな)の入った湯。山椒がかすかに舌を刺激しつつ、柑橘の爽やかな香りが気分をゆったりさせてくれます。

バーと藤丸さん
バーと香煎

 
 

奈良とお茶の深~い関係

ところで、茶の湯といえば京都をイメージされる方も多いかと思いますが、わび茶の創始者とされる珠光(1423-1502)は奈良で生まれ、登大路ホテル奈良からほど近い称名寺の僧でもありました。また、奈良市の西隣 生駒市高山町は、茶道に欠かすことのできない茶筌づくりの里として知られています。さらに、東大寺近くの塗師(ぬし)松屋久政から3代にわたって書き記された「松屋会記」は、現存する最古の茶会記。奈良と茶の湯の関係は、そのはじまりから現在に至るまで、とても深くつながっているのです。

茶筌
関連記事:茶筌の里 ― 生駒市高山

 
 

国宝北円堂を借景に 世界でひとつのスイートルーム茶室

さて、いよいよ茶席のスイートルームへ向かいます。ゆったりとソファーに着座した後、お点前の開始と共にカーテンが開きます。南に大きく開いた窓の正面には、興福寺の国宝「北円堂」の八角屋根と、その奥の「南円堂」が寄り添うように見えています。奈良の中でも格別と言えるダイナミックな借景を堪能できるのは、登大路ホテル奈良の立つ場所が、かつての興福寺境内にあるためです。

春の登大路茶会
興福寺と藤丸さん
茶事風景

ソファに腰をおろし、テーブルと椅子で楽しむ立礼式(りゅうれいしき)用に考案された天游卓で濃茶、干菓子、薄茶を順にいただきながら、東大寺や興福寺をはじめ、奈良にゆかりのある名物の数々をじっくり拝見しました。茶道具にまつわる藤丸さんの楽しいお話は、ここにはとても書ききれませんので、ぜひ次の御茶会で楽しんでいただければ幸いです。

登大路茶会
登大路茶会
登大路茶会
登大路茶会

 

夏の登大路茶会 開催決定

夏の登大路茶会

6月26日から28日、『吉野を訪ねて』と題し茶会を催します。
今回も、ホテル全体を使い茶の趣向を表現します。現代に息づく吉野の物語を紐解くひとときをお楽しみください。

夏の登大路茶会 詳細はこちら